第19回若手奨励賞は,
谷 茉莉さん(京都大学大学院理学研究科)
多羅間 充輔さん(九州大学大学院理学研究院)
柳島 大輝さん(京都大学大学院理学研究科)
の3名が受賞されました.おめでとうございます.
賞の対象となった研究題目と受賞理由は下記の通りです.
(山口毅 第19回若手奨励賞審査委員長)
谷 茉莉氏(京都大学大学院理学研究科)
研究題目:身近なソフトマター関連現象に潜む物理法則とそのメカニズム解明
対象論文:
- M. Tani and R. Kurita, “Pinch-off from a foam droplet in a Hele-Shaw cell”, Soft Matter 18, 2137 (2022).
- M. Tani and H. Wada, “How a soft rod wraps around a rotating cylinder”, Phys. Rev. Lett. 132, 058204 (2024).
- M. Tani, J.-W. Hong, T. Tomizawa, E. Lepoivre, J. Bico and B. Roman, “Curvy cuts: Programming axisymmetric kirigami shapes”, Extreme Mech. Lett. (2024).
谷氏は,ひも状物質の巻き付き,弾性を持つ切り紙による三次元構造の形成,泡沫のちぎれという,日常的に見られる現象の背景に潜む物理法則とそのメカニズムを,実験・理論・数値シミュレーションを駆使した巧みな解析により解明する独創的な研究を行っている.研究成果への国際的評価も高く,今後の活躍が期待できる.以上の理由により,同氏を若手奨励賞受賞候補者として選考した.
多羅間 充輔氏(九州大学大学院理学研究院)
研究題目:細胞運動と組織形成のアクティブダイナミクス
対象論文:
- M. Tarama and T. Ohta, “Reciprocating motion of active deformable particles”, Europhys. Lett. 114, 30002 (2016).
- M. Tarama and R. Yamamoto, “Mechanics of cell crawling by means of force-free cyclic motion”, J. Phys. Soc. Jpn. 87, 044803 (2018).
- S. Sekine, M. Tarama, H. Wada, M. M. Sami, T. Shibata and S. Hayashi, “Emergence of periodic circumferential actin cables from the anisotropic fusion of actin nanoclusters during tubulogenesis”, Nat. Commun. 15, 464 (2024).
多羅間氏は,細胞運動や組織形成に対するモデル化による理論的研究を行っている.特に細胞骨格の構造形成に関しては,実験研究者との共同研究によって実験結果の定量的再現と物理的描像の解明に成功している.細胞運動に関する研究も興味深く,研究者としての将来性が期待できる.以上の理由により,同氏を若手奨励賞候補者として選考した.
柳島 大輝氏(京都大学大学院理学研究科)
研究題目:微視的な「機械的均一性」によるガラス相の安定性の創発
対象論文:
- T. Yanagishima, J. Russo and H. Tanaka, "Common mechanism of thermodynamic and mechanical origin for ageing and crystallization of glasses", Nat. Commun., 8, 15954 (2017).
- T. Yanagishima, Y. Liu, H. Tanaka and R. P. A. Dullens, "Particle-Level Visualization of Hydrodynamic and Frictional Couplings in Dense Suspensions of Spherical Colloids", Phys. Rev. X, 11, 021056 (2021).
- T. Yanagishima, J. Russo, R. P. A. Dullens and H. Tanaka, "Towards Glasses with Permanent Stability", Phys. Rev. Lett., 127, 215501 (2021).
柳島氏は,コロイドガラスの脱ガラス化に関して,計算機シミュレーションと実験を駆使した研究を行っている.局所密度の不均一性が脱ガラス化の起点であり,機械的均一化により脱ガラス化が抑制できることを計算機実験により示し,回転運動から機械的均一性を評価する実験手法を提案した.同氏の研究は独創性が高く,将来の活躍が期待できる.以上の理由により,同氏を若手奨励賞受賞候補者として選考した.