領域12 インフォーマルミーティング 議事録
文責:横島智(東京薬科大薬)
日時:11月19日(水)18:00-19:05
開催方法:Zoom
参加者21名
開催理由
毎年、年2回の学会中におこなわれる1時間のインフォーマルミーティングだけだと、論点があっても時間的に議論が不十分になり、なかなか話が進まないことがある。今回、Zoomという開催手段が得られ、また、物理学会の英語対応という議題(開催動機)もあることから、臨時インフォーマルミーティングを開催した。
今後も、何か議題があった時には、このような形で議論を深めてもいいのではないかという問題提起でもある。また、このような臨時の会議により、領域12内の交流が深まることも期待している。
議題
(1) 物理学会の英語対応について
(2) 合同セッションの運営に関する提案
(3) 合同シンポなどについて
(1) 物理学会の英語対応について
前々回、前回のインフォーマルミーティングの議論について復習した後、事前にメールで寄せられた以下のような意見も示した。
• 日本語だと違う分野の情報も入りやすいので、スライドは英語で、言語は自由がいいのかなとも思っています。(生物物理は英語ですが、日本国内の議論もしやすい方がいいですし。)また、もし国際化を考えるなら、日本のローカルな人の研究を海外に発信したい、また、海外の人と交流というのであれば、数年に1回、国際会議として開催したらいいのではないか。
• 自分の好きな言語で自分の考えを発表することは、思想や信条とも結びついていていると思っています。つまり、その自由を奪うということに対して、表現の自由や思想信条の自由を奪うのと同じ意味で反対するということです。ですから、「自由」という部分が重要で、とにかく日本語で発表できる自由があれば良い。
さらに、昨年度の領域会議でおこなわれた議論についても説明した上で、論点を明確にするため、以下のように英語対応のメリット・デメリットをまとめた。
メリット
• 海外からの参加者を呼び込みやすくなる。
• 英語での発表を聞いたり、発表したりすることで、参加者が国際化に対応しやすくなる。
デメリット
• 学生さんなどが参加する上で敷居が高くなる。
• 質疑におけるすれ違いの心配がある。
• 講演の理解度が下がる。
また、この話と強く関係する別の視点として「海外参加者は日本物理学会への参加に魅力を感じるか?」ということで以下の点についてもまとめて提示した。
• 「協定外国学会員、および各領域指定の登壇資格を持つ非会員」以外は、シンポか招待でないと学会員にならないと発表できない。
• 海外の人に日本物理学会員になるメリットはどれだけあるか?また、日本物理学会員になったとき、どれだけ活動できるのか?(日本語ができないと、少なくとも領域12での活動は難しい。会誌もほとんど読めない。ホームページの問題もある。)
• 英語発表を増やす以外にもやることあり。
• 一方で、オンライン開催で海外からも参加しやすくなっている。
その上で、領域12からの意見として
1. 企画提案(招待講演,シンポジウム等)は英語で行うことを推奨する(ただし、「物理と社会」のテーマに関する企画提案は除く。)
2. 企画提案,一般講演のスライドは英語を推奨する
という2つの点について
• 賛成
• 反対
• もっと別のやり方をした方がいい
ということで、1.や2.の話に限定せず意見を募った。以下、意見を列挙する。
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日本語で物理を語れる場であることが日本物理学会の特徴なので、それをわざわざ英語にする必要はないのではないか。スライドなどを英語にするのは構わないが、強制はよくない。先生が学生に英語を使わせようというのなら、先生が学生を指導する時にそうすれば良く、学会で決めることではない。
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スライドが英語で発表が日本語だと、日本語がある程度できる外国の方の場合、かえって分かりにくいという人もいた。スライドを英語にするのが、必ずしも外国の方にとって講演の理解の助けになるとは限らない。
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このような案件について物理学会が学生も含む会員全体ににアンケートをとったことはあるか?(多分、ない。)
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推奨という言葉は強制ではないが、強く受け止められているのではないか。研究室の学生に外国人が多く、そういう人達は、大半の講演が日本語だと、そのような学会では発表しにくい。英語になると、外国人の学生にとっては発表しやすくなるというメリットはある。ただ、強制はやはり違うと感じる。日本語で発表する自由は担保されるとか、推奨という言葉を弱めた表現にするという考え方もあるのではないか。ただ、現状でも英語で発表できるので、推奨をあまり弱め過ぎると、そもそも書く必要もなくなってしまう。
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シンポジウムは普段からなかなか聞けない話を基礎から時間をかけて話して下さる方が多い場だと感じている。日本語で話してもらえると、学生さんにも伝わる。英語でより幅広い聴衆に話すというのもある。いずれにしても、シンポジウムを企画する側が決めることなのではないか。
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オンライン開催で海外からも参加しやすくなっているとのことだが、物理学会はオンライン開催をいつまで続けるつもりか。(わからない。ハイブリッドという形で続く可能性はあるかもしれない。)もし、オンラインにすることで参加者が増えたということがデータとしてあるのなら、それを基準として議論をしてみてもいいのではないか。
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英語しか分からない人には、少なくともスライドだけでも英語なら、発表とスライドの両方日本語よりも、少しはプラスになるのではないか。
英語しか分からない人が物理学会を聞きにくるのかわからない。どこまでをターゲットとするのかという話しになる。
日本語が出来ない学生さんたちから聞いた話として、図の軸だけでも英語だと分かりやすいし、説明文が英語で書いてあるとだいぶフォローできる。
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聴衆が日本人ばかりなのに、英語でやるのはむなしい。議論がしにくいし、理解度が下がる。外国の人がいて初めて英語でやる意味が出てくる。英語でやるのなら、同時に海外からの発表を増やす仕組みが必要である。そうやって、英語でないと分からない人がいるという条件を作っていけたら良いのではないかと思う。
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時差を考えると、アメリカやヨーロッパの人が、日本にとって都合の良い時間に起きて、英語で発表できるからというだけで参加するということはありえない。参加するとしたら、ちゃんと議論する場や面白い発表がある時に限る。むしろ、時差を乗り越えて海外から発表したい人は、日本の研究者と日本語で議論したい海外にいる日本の研究者だったりする。その場合、むしろ英語でなく日本語のままの方が良いのではないかと思う。
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オンライン学会で日本人が海外の学会に参加するハードルも下がっている。英語発表のメリットとして日本人が英語に徐々に慣れるようにして海外の発表を出来るようにするということがあったが、そんなことをしなくても、それはある意味オンライン学会による海外の学会参加で実現されてしまう。逆に日本語でしっかり議論できるということが、海外の学会との差別化ができ、安定した参加者が見込めるのではないか。オンライン開催が続いた場合、むしろ日本語の方がいいのではないか。
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物理は英語で勝負しないといけないので、なんとか英語をプロモートしたい。物理学会はプロのものであると同時に、教育の場でもある。物理学会で英語を要求されたら、学生が日常的に英語を練習していくと思う。究極的には全部英語で発表すべきだと思う。ただ、急には無理だからまずはスライドだけ英語でということを提案した。生物物理学会は10年ぐらい前に英語に切り替えた。最初は学生はほとんど出来なかったが、数年間で学生でも普通に発表できるようになったので、生物物理学会でも出来るのなら、物理学科でも出来るのではと考えている。国際会議でアジアの学生が英語が上手だが、日本だけなぜだめなのか。なんとか英語をプロモートしないと、世界で戦う時、不利になってしまう。物理学会をひとつの教育の場として、でも急には無理だから、まずスライドだけでも英語にして、最終的には英語で口頭発表までもっていきたい。
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海外から日本に来られて、2〜3年過ごしていく方にとって、日本語は難しいので、どうしても2〜3年では学会で議論出来るレベルまでは習得しにくい。でも、そういう人たちのことも日本の物理学会としてケアしてあげるべきではないか。ちゃんと参加できないと、最後まで日本物理学会の一員というよりは、最後までお客様ということになってしまう。もっと、長期日本にいて、でも日本語が出来ないかたもいると思うが、そういう人たちももっと活発に参加できるような環境を整えるという視点から、英語対応を議論することは決して悪いことではないと思う。日本に滞在している海外の方たちが、もっと生産的な形で物理学会に参加できるようにするために、もう少し英語対応というのがあることが重要になってくると思う。
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物理学会として英語を推奨すべきかどうかについて、やり方だけでなく、学会がどちらを目指すのかという方向性も含めたアンケートをとるべきなのではないか。
上記のようにさまざまな意見が出て、それを領域会議で話していくということで、どのように話していくことになるのか分からないので、まとめたものを領域会議の前にメーリングリストに流して欲しいという意見が出て、そうすることになった。
(2) 合同セッションの運営に関する提案
領域11と領域12で主領域をどのように交代するか2つの領域の運営委員間で調整をおこなって出された以下の提案が承認された。
ガラス合同 春:領域11 秋:領域12
アクティブマター 春:領域12 秋:領域11
生物合同 春:領域12 秋:領域11
また、これに関係して、以下のような意見があった。
(1) 何年かに一度はシャッフルさせた方が良い。
(2) 予め主領域を決めておいたとしても、プログラム編集時に送られてくる講演申込数によっては主領域を調節できるような自由度を持たせておくと公平性が保たれるかもしれない。
(3) 運営委員側の都合としては予め主領域を決めておく事で、プログラム編集の時期に相談する事なく効率よく編集ができる。特に、今秋季大会の編集では座長の内諾も含めて同じ期間で編集提出しつつ、東京での対面での最終チェックもなかったため、予め主領域が決められていたほうが助かる。
(3) 合同シンポなどについて
今回、領域12からシンポジウムの提案なし。今後の学会で、シンポジウムや招待講演の提案を、どんどんしていってほしいと思う。