第20回若手奨励賞は,
坂本 遼太氏(Institute of Physics, Academia Sinica)
坊野 慎治氏(立命館大学総合科学技術研究機構)
保阪 悠 氏(Max Planck Institute for Dynamics and Self-Organization)
の3名が受賞されました.おめでとうございます.

賞の対象となった研究題目と受賞理由は下記の通りです.
(野口博司 第20回若手奨励賞審査委員長)

坂本 遼太氏(Institute of Physics, Academia Sinica)

研究題目:人工細胞で解き明かす細胞骨格系の対称性の破れとエネルギー変換の物理学
(Uncovering the physical principles of symmetry breaking and energy conversion in active cytoskeletal systems through artificial cells)
対象論文:

坂本氏は、アクトミオシン細胞骨格による構造、運動制御について研究を行ってきた。論文1では人工細胞内で、アクトミオシンの力学的相互作用により細胞核様の構造体の配置が中央に決まることを示し、論文2では配置対称性の破れが人工細胞の自発的運動を起こすことを明らかにしている。論文3では光刺激によってミオシンの活性化を空間的に制御する独自の実験系を構築し、形態変化の進行に伴う機械的エネルギーの投入量と消費速度を定量的に測定することに成功している。質の高い実験研究を推進しており研究者としての力は高く評価できる。以上の理由により、同氏を若手奨励賞受賞候補者として選考した。

坊野 慎治氏(立命館大学総合科学技術研究機構)

研究題目:表面設計に基づいたソフトマター液滴の構造及びダイナミクスに関する研究
(Study on the structure and dynamics of soft matter droplets based on the surface design)
対象論文:

坊野氏は、液晶や水溶液、液体金属によって構成される液滴について、様々な実験を行い、その制御、解析において顕著な成果を上げている。論文1では熱流印加による液晶液滴の回転運動を、論文2、3では液滴の空間的な接触・分離過程によって、接触した液滴間において溶質を輸送について研究している。論文2では体積の移動量を定量的に求めており、論文3では交流電場と液滴振動の共振現象が、溶質濃度の拡散を効率的に促進することを明らかにしている。特に、共振現象による溶質の輸送促進は高く評価できる。以上の理由により、同氏を若手奨励賞受賞候補者として選考した。

保阪 悠人氏 (Max Planck Institute for Dynamics and Self-Organization)

研究題目:対称性の破れが誘起する非平衡輸送現象の理論研究
(Theoretical study of nonequilibrium transport phenomena induced by broken symmetries)
対象論文:

保阪氏は、アクティブマター系で見られる反対称粘性を持つ流体の性質について理論研究を行っている。論文1では反対称成分を持つグリーン関数で反対称粘性を表すことができることを明らかにしている。論文2では反対称粘性を持つ流体においてもOnsagerの相反定理が成り立つことを示している。論文3では反対称粘性を持つ流体中を泳ぐ物体のカイラル走行性を明らかにしている。反対称粘性について基礎的な研究成果を上げており、研究者としての力は高く評価できる。以上の理由により、同氏を若手奨励賞受賞候補者として選考した。